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「フィルムカメラとデジタルカメラについて」 2009.02.02(月) 中目黒にて

フィルムカメラとデジタルカメラについて
「デジカメは嫌い、でもデジカメも好き」
デジカメもフィルムカメラも、両方いいところがあります。
だから。両方を使ってみましょう。
良いところを知る事で、カメラの使い方が今まで以上に、
自然なものになるはずです。

抜粋「写真がもっと好きになる。」より

上記文章は、菅原先生の著書「写真がもっと好きになる。」より抜粋したものです。

本日は、筆者も参加している東京観光写真倶楽部にてお世話になっている菅原先生に、改めてデジタルカメラとフィルムカメラで撮影した作品についてどのように考えていらっしゃるか、雑談を交えながら聞かせていただきました。
菅原先生は、フィルムカメラもデジタルカメラもどちらも利用されていますが、それぞれのカメラから生み出される作品には主に3つの違いがあると感じていらっしゃるそうです。

1つ目の違いとして、フィルムとデジタル、それぞれの現像過程において「水」が関係するかどうかが作品の雰囲気を左右しているとの考えをお話してくださいました。

菅原一剛 談:
「主観的ですが、CCDで撮影すると、写真生成の上で水を使う工程が無いので、
フラットになりがちな写真が生成される傾向がある。
フィルムには現像プロセスの過程で「水」を使用している事が、
潤いのある作品を生み出す事に繋がっているような気がしています」

フィルムとデジタルの現像プロセスの違いとして出てくる「水」ですが、先生の著書「写真がもっと好きになる。」においても次のようにコメントされています。

デジカメが撮る写真には雰囲気みたいなものが、なかなかうまく写りません。
雰囲気というのは、その場の空気みたいなものかもしれません。
もちろん空気は透明ですが、空気には”湿度”があります。
地球上のどの土地でも、かならず水分を含んでいます。
この”空気感”がなかなか写らない理由は様々だと思うのですが、
ぼくがいつも考えるのは、デジカメの写真づくりのプロセスには
”水分”という要素がないという事実です。

抜粋「写真がもっと好きになる。」より

デジタルカメラから生み出される作品とフィルムカメラから生み出される作品、その違いは感覚的なものかもしれません。しかし、確かに撮影機材だけではなく、それぞれのプロセスに違いがあることは事実であり、フィルムカメラの現像プロセスのみに「水」が関係していることも事実です。
一見同じように見えても、写真づくりのプロセスによって出来あがる作品に微妙な違いがうまれてくるのかもしれません。

これまでプロとして多くの写真を撮影されている、菅原先生ならではのコメントなのだろうなと思わず聞き入ってしまいました。

2つ目の違いとしては、「光」があるそうです。
デジタル一眼レフカメラを始めとするデジタルカメラのCCDやCMOS(※)の直前には、画像を安定させる為に「ローパスフィルター」と呼ばれるフィルターが取り付けられています。このフィルターは、画像を安定させる過程において、デジタルで表現しきれない特定の波長の光を除去しているため、カットされた目に見えない光が表現する“ひかり”を映し出す事が出来ない場合があります。
そのため、デジタルカメラでは、思ったように表現しきれないことがあるそうです。

菅原一剛 談:
「カットされた光の中に写真にとって、とても大切な光が含まれていることがあります。
それは音楽を聴く為の「iPod」などが高音域を表現出来ていないのと同じような感覚に似ている。」

写真は“どのように光をとらえるか”が重要だという認識は素人ながらに持っていましたが、今回先生にこの除去された光についてのお話を伺って、改めて写真と光の関係の奥深さを思い知りました。

※ CCD/CMOS…デジタルカメラのイメージセンサ。フィルムカメラにとってのフィルムにあたる。

その他の違いとしては、フィルムには撮影枚数に制限があるので1枚1枚を丁寧に撮影する傾向があるが、デジタルで撮影すると何回も撮り直しを出来るというメリットのせいか、丁寧に撮影する事が少なくなっているように感じているそうです。

菅原先生が主催している「東京観光写真倶楽部」という写真サークルでも、1枚1枚を大切に撮る為に、あえてフィルムカメラでの撮影に限定しようかとも考えられているそうです。
デジタルカメラを使う場合にも、フィルムと同じように1枚1枚を大切にする気持ちを持って撮影する事が出来れば、より良い作品を生み出す事が出来るのかもしれません。

さて、これまで、デジタルカメラとフィルムカメラでつくり上げられる作品の違いとして「水と雰囲気」「光と特定波長の表現」「1枚を大切に撮影する気持ち」を伺ってきて、どちらかというと先生がフィルムカメラ派?という印象を受けましたが、実際にはそうでもないようです。
その証拠に先生がオープニングディレクターを担当された「蟲師」のオープニング映像の編集は、すべてデジタル編集されたものですが、そのプロセスの中において、CGは一切使わずにアナログ的な要素をデジタルと重ね合わせることで、可能性が広がることを実感されたそうです。

また、実際に昨年、赤十字のイベントで開催した個展「Sundle Ghona“美しい村”」では、菅原先生にとって初めてデジタルカメラで撮影した写真のみで個展を開催するという新たな試みをされたそうです。個展の写真はすべて「NIKON D3」にて撮影されましたが、今までのデジタルカメラとは違う印象を持たれたとのことでした。

まさに、「デジカメは嫌い、でもデジカメも好き」。
先生のこの言葉に象徴されているように、フィルムカメラなりの良さを大切にしつつも、新たにデジタルカメラでのチャレンジもされているのだなと認識する事が出来ました。


Sundle Ghona“美しい村”より


対談の過程で印象的だったのが、デジタルカメラ・フィルムカメラに関わらず、これからも残してゆきたい文化として「プリントアウトする事を大切にしたい」と言われていたことです。

菅原一剛 談:
「主観的ですが、CCDで撮影すると、写真生成の上で水を使う工程が無いので、
フラットになりがちな写真が生成される傾向がある。
フィルムには現像プロセスの過程で「水」を使用している事が、
潤いのある作品を生み出す事に繋がっているような気がしています」

先生も最近は、フィルムカメラで撮影されたフィルムも、現像と同時に「PHOTO CD」を焼いてデジタル上でも少しでも残していきたいと考えているそうです。

菅原一剛 談:
「時間がある時には、プリントされた写真たちを写真集をめくるようにゆっくりと眺めてみます。
もう8年目を迎えている『今日の空』にしても、“ただのなんでもない空”かもしれない一枚の写真から、自分自身のきもちのようなものだったりが見えてきます。プリントという”もの”としての存在が、実感をもたらすのでしょうね。」


そしてあっという間に日が暮れる。正にマジックアワーな空。
@西麻布 Nishiazabu, Tokyo

「デジタルカメラを主流になっても、プリントアウトした作品に触れる文化をこれからも大切にして行ければと思います。」

最後に、今回の題材とは直接関係ありませんが、個人的興味から先生が写真を撮る上で大切にしている事はどんなことでしょうか?とお聞きしてみたところ、マグナム・フォトを立ちあげたロバート・キャパの話をして下さいました。
ロバート・キャパは、「アマチュア写真家へ、何かアドバイスを」との問いかけに、「人間を好きになること、そして、それを相手に伝えること」と答えています。

菅原一剛 談:
「考えてみたら、何度となく世界中で繰り返されている「ロバート・キャパ写真展」は、 いつでも、どこでも、その会場に、いまだに多くの人々が足を運びます。そのことでも、「キャパの写真は魅力的である」、「魅力がある人であった」ということが、証明されているのかもしれません。
この「人間を好きになること、そして、それを相手に伝えること」が写真を撮る上で大切にしていることです。
そして何よりも“何を撮りたいか”あるいは“どのような写真を撮りたいか”が大切だと思います。 大切なのは、そのカメラで撮った写真を見て、楽しいと思えることなのですから…」

菅原一剛氏 プロフィール
写真家。静的かつクオリティの高い写真で評価が高く、オリジナルプリント作家としても注目される。映画「青い魚」では撮影監督を務め、現在は、数多くの広告写真・CFなども手掛け、その活動領域は多岐にわたる。
2004年フランス国立図書館に作品10点が収蔵される。また、2005年6月には、ニューヨークのPace/MacGill Galleryでのデビューを果たす。

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